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2011.07.03 Sunday

自転車映画鑑賞記。

先日、渋谷アップリンクにて「サイクルロードレースの世界」の特集上映を観て参りました。
わしが観て来たのは「BLOOD SWEAT+GEARS」と「BEYOND THE PELOTON 2009」。

以下、ネタばれをそれなりに含みますのでご注意をば。
「BLOOD SWEAT+GEARS」
番宣見るとアンチドーピング啓蒙映画?と思われそうですが、アンチドーピングはあくまでチーム設立のコンセプトで、映画の内容は2008年のスリップストリームのシーズンインからツール出場までの記録でした。
「正直者が馬鹿を見る」世界に嫌気がさして選手を引退し、自分のチームを立ち上げたジョナサン・ヴォーダーズの立ち振る舞いは、なんとなくF1のクリスチャン・ホーナーを思い出したり。アンチドーピングがコンセプトのチームに何故あえて元ドラッグ・チーターのミラーを呼び寄せたのか、個人的にはもう少し掘り下げて欲しかったかな(おそらくヴォーダーズとミラーが仲が良かったから、でFAなんでしょうが)。ただ、かつて「すべてを失った」ミラーが何故プロトンで受け入れられてるか、は理由のひとつがこの映画で見えた気がします。自分の過去を、弱さを真正面から受け入れられる痛々しいほどの素直さがあったからなのかな、と。
肺塞栓症で倒れた時に世間からドーピングを疑われ、世間における自転車選手のイメージを思い知りながらも北京五輪出場を目指すフリードマン、パリ−ルーベでいきなり4位に入って世間をあっと言わせたネオプロのマースカントの影で、かつて優勝した経験もある大好きなレースをトラブルで失った大ベテランのバクステッド、同じチームの選手とマッサーという、一番近い距離にいながら忙しさですれ違い続けてついには別居に至ってしまったペイト夫妻、ランスのアシストとして長年日の目を見なかった才能が新しいチームで花開いたヴァンデヴェルデ、そのヴァンデヴェルデにエースの位置を奪われたことに葛藤しつつもそれを受け入れて立ち直っていくミラー…と、エピソード自体は重いものも多かったけど、ヴォーダーズのキャラクターとミラーの真摯さ、なによりチーム全体を取り巻くきらきらした希望に救われる、良作でした。自転車映画の類観たことない人には最初の1本に最適かも。

惜しむらくはザブリスキーの出番が全くと言っていいほどなかったことですが、あの人がいたら出てくるたびに話の腰ばっきばきに折ってた気がしなくもないので、これはこれで良かったのかも知れない(笑)。


「BEYOND THE PELOTON 2009」
なげえよ!!!(正直な感想)

映画の作り自体は、一人のスタッフの青年の語りを軸として、チーム設立から09年ツール出場までの経緯を淡々と追っていく、ドキュメンタリーに徹したつくりでしたが、とにかく長かった…(何せ160分)。特にグランツールに入ってからはただひたすらスタート前、ゴール後のシーンを描いていくつくりで、ものすごく観てて疲れました…場面転換でやたらと暗転が入るので目が痛かったです…_| ̄|○

メインはサストレ、フースホフト、ハウッスラーといったスター選手でしたが、GPSの異名を持ち要所要所でチームをまとめるベテランのクリアー、ジロで活躍したパウエルスやコノヴァロヴァスなどの若手もピックアップしてたり。特に遅れたサストレを助けるために待つように指示されて大逃げを諦めざるを得なかったパウエルスが、翌日サストレのステージ優勝をアシストして喜んでる姿はこういう成長譚もあるんだなあと。
あと「OVERCOMING」当時は気難しいイメージがあったサストレが、開幕前からこの日にかけていた、と言っていたツールのステージで大幅に遅れてしまい、翌日メンバーに謝罪するシーンは、人も年取ると変わるんだなあ、と思わずにいられなかったり。
あ、でもサストレにどうしても一言言いたいことがある。「ネタにマジレスカコワルイ」(ツール直前の記者会見でランスのコメントに反論してたやつね)

内容自体はサイクルロードレースが好きな人なら面白いと思うんですが、とにかく淡々と長いのが上級者向きになってしまってる感があった作品でした。少なくとも映画館で、というより、家でDVDとかでじっくり見たい作品かも。(アップリンクの椅子が長時間鑑賞に向いてないのもありますが)