■2007年F1日本GP観戦記・土曜日■

 ※今回幸運にも、F1.panasonic.com様の応援メッセージ募集で当選して、土曜日にパドッククラブに招待して頂きました。
  以下はレポートとして提出させて頂いたものの『原文』です。サイトにアップされているものはあちらの規格に合わせて一部修正していただいています。
 (PNは、うちのF1ブログ読んで下さってる方ならすぐ分かるかと)

 …微妙に文章が『余所行き』なのが自分で笑える。

 私は、雨の予選が嫌いだ。

 初めて日本GPに訪れた2003年、金曜日の暫定PPから一転、予選途中から降り出した雨になすすべなくピットに入っていった水色のマシンの姿。
 シーズン終盤に投入されたTF105Bに乗るのを渋っていた2005年、アタックラップでデグナーのサンドトラップに放り出される姿。
 ヤルノの「一発の速さ」に魅せられた者として、一番見たくない姿だった。

 それでも、心のどこかで、この人の「一発の速さ」があれば、もしかしたら、と、どこかで奇跡を信じている自分がいた。日本GPに来る度に。


 御殿場線の始発を降りると、目に入るのは「16℃」の電光表示。前日までとの温度差に加え、週頭から風邪をひいていた身には堪えました。
 幸い、時間が早かったのもあってさほど並ばずにバスに乗れましたが。
 サーキットに着くと、しとしとと降る霧雨が時折勢いを増す、あいにくの天気。
 パナソニックのアドタワーの前で号外とステッカーを貰い、次田さんにご挨拶をしてパドックへ案内してもらいました。
(そういえば今年のアドタワー、昨年は3面ともラルフだったのにこっそり文句言っていたら、今年は3面ともヤルノでした。
 あれはあれで嬉しかったですが、個人的にはライトアップの演出も込みで05年のが一番好きだったな。二人とも平等に扱ってくれたし)
 パドッククラブへ行く途中に、パドックの入り口(お恥ずかしい話ですが、『パドック』と『パドッククラブ』が全く別というのを知ったのもつい最近です)を通りかかったら、ちょうどヤルノが出勤してくるところでした。


 フリー走行の前に、特別にパスをお借りして、普段は入れないピットの中を見学させて頂きました。
 ウォーマーに包まれたタイヤの林立する空間は、その場にいるだけでぽかぽかと暖かかったです。お願いしてウォーマーにも触らせて貰いましたが、手で触った温度は電気毛布のようでした(内部はドライタイヤが80℃、ウェットタイヤが60℃、でしたっけ)。
 迷路のようなピット裏を抜けて、いつもスタンドから見ているガレージの中へ。カウルが外されたF1マシンの内部はきらきらしていて、芸術品のような美しさに涙が出そうになりました。
 これくらい研ぎ澄まされていないと、時速300kmなんてとても出せないんだろうな、と。


 午前のフリー走行はトヨタのパドッククラブの中から観戦。
 事前に、
「このガラスの中からエンジン音聞くと凄く不思議な音がするんですよ」
 と次田さんに教えていただいてたのですが、聞こえてきた音は確かに「ふぃよぉおぉぉん」とも「ゎよぉぉおぉんん」ともつかない、エンジン音の高音部分だけ抽出してエコーをかけたような、テクノサウンドの効果音のような不思議な音でした。
 が、それも数周走ったところでほとんどの車がピットへ。遠くを見ると、ピットの出口の信号がやっと見えるくらいの濃い霧。
 窓際でクルーが車を押してガレージへ入れるのを見下ろしていると、ピット前に張られたロープのところまでヤルノがひょこっと現れました。
 
 テレビカメラとマイクを向けられて何かしゃべってる姿は、レーシングスーツを着ていなければ普通の「お兄さん」で、この人がさっき見たマシンに乗って時速300kmで走っているという事実がいまいちぴんと来ないというか、自分の中で未だに映像が繋がりません。
  この中にいるのが上の人と同一人物なんですよねえ。
 
 
  ラルフはピットウォールで首脳陣としきりに何か話していました。

 
  空を見上げる首脳陣。

 何度かセッション開始が延長された後、結局フリー走行は中止に。

 木曜日とはまた違うピットウォークを堪能し、おいしいランチとシャンパンを味わい、ピットの映像を解説するモンタニーのトークを楽しむ、いつもと違うセッションの合間。ガラス越しに向かいのグランドスタンドを見ると小雨の中レインコートでうずくまる人が大勢いて、普段は自分が向こう側にいるんだよなあ、と思うと不思議な気分でした。ただやはり、天気が天気だったので雨に濡れずに観戦できるのは有難かったです。
 次田さんは「(マシン特有の)匂いが無いのが気に入らない」とのことでしたが。
 ふわふわカプチーノ。寒かったので大変有難かったです。美味しゅうございました。


 そして予選。
 パドッククラブの裏手に専用の観戦席がありますよ、と案内していただいてたのですが、雨に濡れるのが嫌で第1ピリオドは午前中同様、パドッククラブの窓際で観戦していました。マシンがピットに出入りする様子を写真に撮りながら観戦していたのですが、終了間際にラルフと山本左近が接触。映像が映し出された瞬間、落ち着いた雰囲気の室内が一瞬だけさわつきました。
「ラルフ、第2ピリオド出られないんですか?」
「多分無理でしょうね」
 第2ピリオドが始まる直前、私はカメラを掴んで外へ走りました。室内で呑気にお茶しながら見ている場合じゃないような気がして。

 遅い足で必死に走って辿り着いたのは、教えて頂いた観戦席。既にセッションは始まっていました。
 パドッククラブの観戦席は、1コーナーを回りこんで短いストレートを駆け下り、コカコーラコーナーを立ち上がったところまで一望できる、眺めのいい席でした。これで天気が良かったらなあと贅沢なことを思いましたが、それよりもヤルノのことが気がかりでした。
 第2ピリオド終了間際、コカコーラコーナーをくるんと回って消えていく銀色のヘルメットを、祈るような気持ちで見送りました。

 双眼鏡を持っていなくてビジョンの順位表示が読めなかったので、第2ピリオドが終了してエンジン音が聞こえなくなるのを待ちました。静まり返ったコースに順位を告げるアナウンスが流れるのを祈るような気持ちで聞いていましたが、上位10人の中にヤルノの名前はありませんでした。

 だから、雨の予選は嫌いなんだ。

 もしかしたらほかの原因もあったのかも知れませんが、あの時思い出したのは雨で不意にした過去2回の鈴鹿の予選でした。
 室内に逃げ帰りたくなりましたが、結局、ヤルノのいない最終ピリオドをその場で観戦し続けました。最後のアタックを終えたアロンソが手を振りながら自分の目の前を通り過ぎようとした時に、ハミルトンの逆転ポールを告げる実況が響いてきたのには思わず笑いそうになりましたが。
 その後、まさに『半べそ』の状態でとぼとぼパドッククラブに戻ってきた自分は、あの場に一番不釣合いだったと思います。

 そんな気分を明るくしてくれたのが、セッション終了後にパドッククラブを訪れてくれたラルフでした。
 ミーハーな自分はラルフを間近で見られるのが嬉しくて当初は素直に喜んでいたのですが、やはり予選の順位が不本意だったのか、珍しく髭を生やしていたせいか、写真を撮られるときの笑顔にも張りが無いように見えたのが気になりました。決勝日の朝にイベントブースに来てくれたときもどこか目がうつろに見えて大丈夫かなと思っていたのですが、トヨタを離れるのを知ったのは月曜日に帰宅してからでした。


 パドッククラブのクローズまで、同行してくれたヤルノファンの友人と次田さんと散々語り明かし(その節は有難うございました、楽しかったです!)、帰り際にテラスからパドックを見下ろすと、子供たちと一緒に記念撮影をするヤルノの姿が見えました。ピカチュウのぬいぐるみをプレゼントされていたのが可愛かったです。
 彼らの目に、ヤルノはどんな風に映っていたのか、そして大人になったときにこの日のヤルノの事をどんな印象で覚えているのか、いつか聞いてみたい気もします。


 最後になりますが。
 当日パドッククラブへ一緒に来てくれたヤルノファンの友人と、パドッククラブでお世話になった方々、そしてパナソニックの次田さんはじめお世話になった皆様、トヨタF1チームの皆様にこの場を借りてお礼申し上げます。有難うございました。
 嬉し涙は来年以降にお預けになってしまいましたが、ヤルノの仕事場を僅かながら肌で感じられた、またとない貴重な体験ができました。あの日の自分は、日本一幸せなヤルノファンだったと思います。

 

 …とまあ、こんな感じで。
 そういや次田さんが「チョーさんが『鈴鹿の教訓が全然生かされてない!!』って怒ってましたよ」って仰ってたんだよな。
 その意味を理解したのは家に帰ってからになるのですが。

 レポートには書きませんでしたが(パドッククローズ後だったし)今回何より一番のネタは、『フェッテル君にみんなで群がってたら通りすがりのバリチェロに笑われた』事かも。
 『んもう皆若い子が好きなんだからん♪』といった感じの、バリチェロの生暖かい笑顔は当分忘れません(笑)。(や、あれはもしかしてわしらでなしにフェッテル君に向けたものだったのかも)
 「Hero is coming!!」ってaishaさんに声をかけられて、照れくさそうに笑っていたフェッテル君は可愛かったです。はい。

 わし、この日ブルツに握手してもらったんだよなあ…。でっかくてがっちりした手でした。

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