さすがに決勝日だけあってバスに乗るまで20分ほど待たされたけど、こんなもんかな、と思いながら一路サーキットへ。
渋滞もほとんどなくサーキットに着いたものの、おや、と思ったのはバスを降りた後だった。
金曜日にあんなにたくさんいてわしらを迎えてくれた蛍光グリーンのパーカーのスタッフさんを、この日、ほとんど見かけなかったのだ。
みんな、何処に行っちゃったんだろ。
霧は幾分ましになった気はするけれど、昨日からの細かい霧状の雨は止む気配はない。
朝はいつものように配布物をもらい、イベント広場でラルフのトークショウを見る。
30分以上前から雨の中粘った甲斐があって最前列でラルフを堪能できたのは良かったけれど、
肝心のラルフがなんかこう、表情がどんよりしてるような…。
ラルフも過去にイベントで何度も見ているけど、いつも、さっき日本に着いたばっかりだけど全然元気だよ、と
にこにこ笑っていたラルフと何か違う、そんな印象でした。
…まあ、それでもその時はまだ『ラルフ可愛かったー♪』ってきゃいきゃいはしゃいでいられたんですが。
人込みで傘がさせなかったので、その後の浜島さんのトークショウまで拝聴した頃にはすでに全身ずぶ濡れ。
トークショウの後はaishaさんと別れ、温存しておいたポンチョを着込んで自分の席があるDスタンドへ。
ドライバーズパレードが終わったら、あとはもう決勝が始まるまでひたすら待つだけ。
薄っぺらいポンチョはあっという間に水がしみてしまい、寒さで歯ががちがち鳴って止まらない。
念の為、と多目に持ってきたタオルは次々使い物にならなくなっていく。
せっかくF1を見に来ているのに、早く終われ! なんて思ったのは初めてだ。
セーフティーカーに先導されて、雨の中をゆっくりとマシンが走る。
普通なら変わるはずのない隊列が、時折ちまちまと入れ替わる。
フェラーリの2台はタイヤ選択を間違えたとか何とか。
…トゥルーリはスピンしてたらしい_| ̄|○
コース状況は決して良くないんだろう。
ゆっくり走っているのに、時折前のマシンを追い越しそうになり、急減速するマシンが何台も見えた。
このままレース終わっちゃうんじゃないのかな、と思ったくらいスロー走行は続いたが、20周目でやっとセーフティーカーがピットへ。
いよいよレーススタート!!
一斉にマシンがなだれ込んでくる中、1台横っ飛びにコーナーの外に吹っ飛んできたマシンが。
…ブルツ?!
フロントウイングが取れたマシンから大きな体が離れるのを、呆然と見送るしかできなかった。
席の場所が1コーナーの外側なだけあって、飛び込みで交錯するマシンが何度も見られるのは見応えがあったが、
そんなバトルから完全に蚊帳の外で、淡々と、とぼとぼと、もっと言うならのろのろと、周回を重ねるだけのマシンが1台。
バトルらしいバトルといえば、ジェンスに易々とインを譲って抜かれたシーンくらい。
…私はあんたのそんな姿を見るために、ここに来たんじゃない!
去年は最後まで走ってくれたのがとにかく嬉しかったのだが、今年はそんな姿を見ているだけで悔しくて涙が出そうになった。
それでも、あの冷たく凍える雨の中最後までじっと耐えて見ていられたのは、この人が最後まで走っていたからに他ならないと、今になって思う。
目の前でアロンソとフェッテル君が交錯。思わず冷やりとする。
でも、それだけですまなかった。
数周後。
…ビジョンに映っているオンボードカメラの映像がマクラーレンのものだということを、
そしてそれがアロンソのマシンだということを、理解するのに十数秒かかった。
わしの記憶では、アロンソは毎年一度だけ、必ずどこかで大きなミスをしている。
今年もミスはいくつかあったし、もう出尽くしたと思っていた。
そういえば、『年に一度の大チョンボ』の時は、必ずリタイアしてたっけ。
まさか、それをこの場で見るはめになるなんて。
それだけで終わらなかった。
ガードレールにマシンを寄せてのろのろと止まるウェバーがビジョンに映る。
何で? またトラブル?! と思った次の瞬間、
同じ画面に、フロントがぐちゃぐちゃに潰れた無残な姿でピットに戻ってきたフェッテル君のマシンが映った。
何が起きたのか分からない。
分かっているのは、二人がもしかしたらぶつかったのかもしれない、という憶測と、
二人がレースから消えた、という事実だけ。
トラブルでピットに戻ってしまっていたラルフが、再びコースに出て行く。
遠目に小さく見えた、Cスタンド手前でマシンを止めたデビッドソン。
覚えているのはそれくらい。いつの間にか、レースはファイナルラップになっていた。
チェッカーが振られて早々に、席を立ってグランドスタンドへ戻る。
とにかく、濡れて凍えた体をさっさと何とかしたかった。
道すがら聞いた場内放送でヘイキが2位だったと知り、ああそんなことなら表彰式までちゃんと見ておけばよかったな、と思ったけど。
そういえば、トゥルーリは何位だったんだろう。芳しい結果でないのは想像つくけど。
ウェバーとフェッテル君は何があったんだろう。
気になっていたのはそのことだけだった。
あと少しでスタンドだ、というところまで来たとき、たまたま通りすがった障害者スペースから突然大声が聞こえた。
1時間半後にカテーテルが切れてしまうと生命に関わる人が中にいるらしいのだが、
サーキットどころかスペースから出られずに係員に詰め寄っていたらしい。
グラスタ裏の売店を駆けずり回って何とかタオルと着替えを調達し、あとはバスの列が退くまで
ビジョンでレースの再放送を見ることにした。
レースの内容より何より、あの2人に何があったのかだけ、知りたかった。
冷え切った体にクラムチャウダーが沁みた。この時だけは1杯500円が高いと思わなかった。
再放送で映ったシーンは、2人が『ぶつかった後』のシーンだけで、新たに分かった事は何もなかったが、
レース中、コース上のバトルに気をとられて見落としていたらしいシーンが映った。
ヘルメットをかぶったまま壁に突っ伏して、おそらく泣いているらしいフェッテル君の姿。
----いいよ、もういい。
そのシーンを見て、わしが思ったのはそれだけだった。
「泣くほど悔しがれる奴じゃなきゃ強くはならんさ」
昔好きだった漫画に、そんな台詞があったのを思い出した。
aishaさん、elinaさんと合流し、御殿場行きのバスの列に並んだのは19時30分ごろ。バス待ちの列はまだまだ続いていた。
まあ鈴鹿の時も結構並んだもんなあ、とのんびり構えながら、携帯で情報収集しながら(トニオのペナルティの件とか気になってたので)
小1時間ほどぼーっと過ごして、はたと気が付いたら御殿場行き以外全く列がない(汗)。
その列ものろのろながら順調に進んでいたものの、やっと乗り場の札に辿り着いたらそこからさらに列が2重に往復していたりで、
どういう列整理してるんだ、と思ったら…。
なんと、あれだけのバスの列を捌いていたのは若いお姉さん一人(汗)。
ほんとに、金曜日にあれだけいた人は何処に行っちゃったんだか(汗)。
わしらが乗ったバスがサーキットを出たのは21時50分ごろ。
幸い道中渋滞はほとんどなく、御殿場線の最終電車が出る直前にぎりぎりセーフで駅に到着。
帰りが逆方向のelinaさんとのお別れもそこそこに電車に飛び乗る。
さらにぎりぎりで到着したもう1台バスのお客さんを待って、5分ほど遅れて電車は出発しましたが、わしらの後ろもまだバス数台分は並んでいたような…。
皆、無事に帰れたのでしょうか。
やー、それにしても宿に帰ってからのクナイプのバスソルトが沁みたこと沁みたこと(笑)。
(寒かったのと足がふやけたまま延々歩いてて擦り剥けたのとで。ぼろぼろになった足の裏の皮は数週間治りませんでした…)
翌朝早くに宿を出て、午前中のうちに帰宅。
5日ぶりにPCのスイッチを入れて初めて、ラルフが今季限りでトヨタを去ることを知るはめになり、愕然としたのでした…。
そして、わし自身は『楽しかった』と思っていたはずのGPで、実は様々な不満が噴出していたこと、
そしてその不満が、わしのような一介のファンが事前に懸念していたことばかり、あるいはそれ以上の事だったこと。
観戦を終えて、ここまで複雑な気分になった日本GPは初めてでした。
来年、どうしようかなあ。
トゥルーリファンとしては金曜日(FCのパーティーがあるだろうから)、ついでにウェバー贔屓としては土曜日(予選日だし)は行かねばならん気もするが、
決勝どうするかで悩みそう。
それ以前に、『何処の席取ります?』『宿どうします?』とか知り合いに気軽に聞ける雰囲気じゃないのがどうしたらいいもんだか(汗)。